ヤンキー君と異世界に行く。【完】
(お姫様になった気分……)
着ているのはドレスじゃなくて、いつもの制服だけど。
豪華な部屋を眺めまわしていると、ラスも向かいの席についた。
「素敵な部屋だね」
「そう?質素なほうだよ」
ラスは自然に答えて、優しく笑う。
(よかった、いつものラスだ)
仁菜はホッとした。
ティーカップはピンクの花柄で、さらにほっこりする。
旅に出てからしんどい毎日が続いていたから、こんなささいなことでも嬉しく思う。
「気に入ったなら、次の出発の日までここで過ごすといいよ」
「……はい?」
「毎晩添い寝しようか?」
ラスは頬杖をつき、いたずらっこの目つきで笑う。
「……っ!しませんっ!」
「あはは、だよねー」
(わかってるなら、いちいちからかわないでよ……)
一緒にお風呂に入ってしまった仲だとはいえ、添い寝はありえない……。
「……でもね、半分本気だよ。
ニーナはここで一人にならないで。
仲間の誰かと一緒にいてほしいんだ」
ラスが突然真剣な顔をするから、仁菜は思わずカップを置いた。