ヤンキー君と異世界に行く。【完】
「どうして?」
ラスは答える。
「ここには俺の兄が、6人いるから。
そのうち3人が未婚」
「うん。それで?」
「たぶん3人の兄は、ニーナと伝説の剣を狙ってくる。
自分が手柄を取りたいからね」
アクアマリンの瞳が、冷たい光を放つ。
仁菜の脳裏には、ノアの姿が浮かんだ。
「王族はみんな、智慧の塔の予言を知ってる。
だけどみんな、あんなもの信じてなかった。
みんな、俺を笑ってた」
ラスが旅に出るときも、仁菜と颯のことは家族に伏せて、内緒にしていたらしい。
「でもさ、俺が伝説の剣を精霊族から返してもらって、異世界の人間とも仲良くなって、砂漠の元反乱軍も手中に収めちゃった。
だから、今さら自分たちもニーナとハヤテを手に入れたいと思いはじめたに違いないんだよ」
シリウスがそう言ってたから間違いない。
ラスはそう言いきる。
「そ、そうかな……?
弟ががんばって、成果を上げたわけじゃない。
お兄さんなら、それを喜ぶなんてこと……」
「ないね。絶対ない。
あいつらは、俺を嫌っているから」
つんとしたラスの顔は、やっぱりキレイだけど、キレイすぎて怖い。