ヤンキー君と異世界に行く。【完】
(仲悪いんだ……)
家族だって合う人と合わない人がいると、仁菜は思っている。
(あたしも、お父さんは好きだけど、お母さんは……)
仁菜の父は出張でほとんど家にいないけど、いるときは仁菜の話を静かに聞いてくれた。
でも、あまり二人が仲良さそうにしていると、母親のヒステリーがひどくなる。
自分が疎外されるのが我慢ならなかったんじゃないかな、と仁菜は推測した。
「そっか……わかった、ラスのお兄さんたちには会わないようにすればいいんだね?」
「うん。あいつら顔が無駄にいいから、色仕掛けで迫ってくるよぉ~~」
ラスはわざと怖い顔をして、仁菜に襲いかかるフリをする。
「やだー、同じ顔じゃない」
「ええっ、そんなことないもん。
俺が一番キレイだよ!」
そこ、胸はるところなの?あなた、男の子でしょ?
だけどラスがあまりに真剣な顔だったので、仁菜は笑ってしまう。
するとラスも一緒に笑って、その場の空気がなごむ。
「今日は本当に、ここで寝て。
ひとりでいると、何をされるかわからないから。
大丈夫、なにもしないし、すぐにみんなも集まってくるから」
「……うん……」
仁菜は、少し胸が痛むのを感じた。
(ラスは、このお城が居心地悪いんだ……)