ヤンキー君と異世界に行く。【完】
なんだか、信じられない。
王子様で、シリウスにあれだけ大事にされていたから、きっと他の人にもすごく大事にされているものだと仁菜は思ってた。
だけど、聞いてみればこのお城にも、血のつながった家族にも、ラスの周りは敵ばかり。
(お母さんに捨てられたとか言ってたよね。
あれは、どういう意味だったんだろう……)
ラスはもしかして、この仲間のなかで一番孤独なのかもしれない。
まだ家族が生きているのに、その中の誰も信じられないなんて……。
だけど旅の中で仲間が困ると、王子としての責任を、ちゃんと果たそうとする。
(みんながいてよかったね、ラス)
シリウスに、アレクにカミーユ。
彼らがいるうちは、きっとラスは大丈夫だろう。
……だけど夜が更けるまで、みんなは部屋に帰って来なかった。
二人だけで夕食をとり、うっかり仁菜はうとうとしはじめる。
颯の意識がちゃんと戻るまで、ろくに寝ていなかったからだ。
(ああ、そういえば、カミーユさんを呼ぶとか言って放置しちゃった……)
いっか。回診のついでに診てもらえたよね、きっと。
(颯が、他人だなんて寂しいこと言うから、いけないんだもん……)