ヤンキー君と異世界に行く。【完】
イスに座ったまま寝てしまった仁菜を見て、ラスは苦笑する。
(無防備だな。だから、注意してほしいって言うのに)
もう寝てしまったものはしょうがないけど。
風邪をひくといけないから、ラスは自分のベッドに仁菜を移動させる。
生まれて初めてしたお姫様抱っこ。
仁菜の体は意外に軽かった。
もろくて、今にも崩れてしまいそうな女の子。
押しに弱くて、自分の意見を押し通すなんてことは絶対にできなくて、いつも周りに振り回される。
だけどその分優しいから、アレクやカミーユの痛みをわかってくれた。
優しくて、気弱なわりに大胆なところもあって、傷つきやすい、仁菜。
彼女をこの戦いに巻き込んだのは、自分の身勝手以外の何物でもないと、ラスは自覚している。
「ごめんね……」
知れば知るほど、仁菜を傷つけたくはないと思う。
だけど、負けられない。魔族にも、兄たちにも。
この戦いに、国民の命と自分の名誉がかかっているのだから。
ラスは自分に言い聞かせ、仁菜の髪をなでた。