ヤンキー君と異世界に行く。【完】
「やあアレク、似合わないものを持っていますね。
どなたへの贈り物ですか?」
廊下で突然背後から肩を叩かれ、アレクはびくりと背中を震わせた。
その無骨な手には、小さな黄色の花をつけた草がにぎられていた。
もちろん、ランドミルには植物が根付かないので、元素を合成してできた偽物だ。
「ああ……ニーナにと思って」
素直なアレクは、首の後ろをかきながらぼそぼそと言う。
「はて、来世まで誓い合った人がいるというのに、他の女性に花を……ですか」
彼を呼び止めたカミーユの目が、メガネの奥で意地悪く光る。
「下心なんてない。お前こそ、その手に持っているものは何だ」
少しムッとして、アレクは言い返す。
するとカミーユは満面の笑みで手に持っていた袋を掲げた。
「甘いお菓子です!疲れたときにはこれが一番ですから」
「……ニーナにだろう」
「ええ、もちろん」
「人のこと言えないじゃないか」
「僕は誰かと違って、完全にひとり者ですから」
ぐっと、言葉につまるアレク。
仁菜の目の前でエルミナにキスをしてしまったアレクは、仲間のうちで一番不利だと言っていいだろう。