ヤンキー君と異世界に行く。【完】
花の模様が彫刻が施された派手なドアは、間違いなくこの城で最も高貴な女性の部屋のもの。
ランドミル王妃……ラスの母親の部屋だ。
「どうしてシリウスが?」
「しっ、聞こえます」
シリウスが開けたドアの隙間から、まるで光が漏れるように、まぶしい金髪が揺れるのが見えた。
ラスの金髪とは少しトーンが違うが、あれは王妃のものに間違いない。
シリウスは部屋の中に向かい、何かを話しかけられ、うなずいているようだった。
そしてすぐに、一礼してその場を去った。
彼の姿が見えなくなり、カミーユとアレクはほっと胸をなでおろす。
いくら王子付の参謀と言えども、男が一人で王妃の部屋に入るなんて、ありえない。
王にばれたら、大変なことになる。
「まさか……逢引き?」
「まさか!だってシリウスは、王妃様より10歳以上年下ですよ?」
「でも王妃様は、年齢不詳の美しさを保っておられるからなあ」
「そうだとしても、あれだけラス様を可愛がっているシリウスが、王妃様と……なんて、絶対ありえませんよ」
カミーユの反論に、アレクはうなずいた。