ヤンキー君と異世界に行く。【完】
王妃はラスのことをよく思っていない。
それは王族に仕える者の中では常識で、知らない者は颯と仁菜だけだ。
そんな王妃の部屋に、なぜ人目を忍んで会いに行く必要があったのだろう。
「直接聞いてみるか?」
アレクが言うと、カミーユは難しい顔をする。
「いえ……シリウスは、話さなければならないことはきちんと話してくれる人です。
今はまだその時期ではないということでしょう」
「信じるしかないってことだな」
二人は胸にもやもやを抱えたまま、自分の貢物を見てため息をついた。
緊張のあまりにぎりしめてしまった花は茎の部分で折れてしまい、菓子はかさかさと割れた欠片がこすれあう音がした。