ヤンキー君と異世界に行く。【完】
・どうして?
次の日、仁菜が目を覚ますと、ラスの部屋は自分の他にはひとりしかいないことに気づいた。
「……やっと起きたか」
少し呆れたような顔をしたのは、シリウスだった。
「お、おはようございます」
「他の者はもうそれぞれの仕事場へ戻ったぞ」
戻った、ということは……仁菜が寝てしまってから、颯をのぞく全員がこの部屋にいたということ。
(まったく気づかないって、どれだけ鈍感なんだろう……)
ベッドから降りると、シリウスが近づいてくる。
「だらしない」
それだけ言うと、シリウスは仁菜のスカートのすそを突然つまんだ。
「ぎゃああっ!」
いきなり何するのっ?
仁菜は反射的にシリウスの横っ面に、平手をくらわせていた。
「なっ……」
まさかの攻撃に、よけられなかったシリウスは呆然とする。
「何をする!」
「それはこっちのセリフです!」
朝からスカートを……スカートをどうするつもりだったのか!
「私はただ、乱れた服装を直してやろうとしただけではないか!
おかしな勘違いをするな小娘!」
「……え」
よく見れば、シリウスが触ったところには上に折れ曲がっていたのであろうシワがついていた。
「す、すみません!」
冷静に考えれば、シリウスが突然スカートめくりなんかするわけがなかった。
颯でさえ、そんなアホみたいなこと、昔からしなかったのに。