ヤンキー君と異世界に行く。【完】
「シリウスさん、何か悩んでるんですか?」
「は?」
脈絡のない質問に、いつもすきのないシリウスから、マヌケな声が出た。
「えっと、あの……」
いつもシャキシャキみんなを仕切ってくれるシリウスが不調だと、心配だ。
(ラスがこのお城で居心地が悪いってことは、シリウスさんにとっても敵がたくさんいるってことだよね……)
だからたぶん、色々あって眠れないくらい悩んでるんじゃないかな。
仁菜は勝手にそう思った。
「いつもがんばりすぎているから、疲れちゃったのかなって……」
シリウスだって若いのに、ラスを支えて、重要な旅の指揮をとって……。
(あたしだったら、重圧でつぶされちゃう)
いつも厳しくて、でもそれはみんなのことを思っているから。
旅の間でいつの間にか、仁菜はシリウスを嫌いだとは思わなくなっていた。
たぶん彼は、ラスのために心を鬼にしているのだと、なんとなくそう思っていた。
「少しは休まれた方が……。
ラスだって、シリウスさんが元気じゃないと困ると思います」
そう言うと、シリウスは仁菜を見て少しだけ目を細めた。