ヤンキー君と異世界に行く。【完】
やめてください、と言おうとした瞬間。
──バン!
部屋の扉が乱暴に開く音がして、シリウスが振り向く。
「お前、何してんだよ!」
「は、颯?」
背の高いシリウスの肩越しに聞こえたのは、颯の声だった。
シリウスは仁菜を壁ドンしたまま、半身をそちらに向ける。
仁菜に見えたのは、シリウス以外の仲間たちだった。
「……シリウス……?」
「お前、何を……」
カミーユとアレクが信じられないという顔で、こちらを見ていた。
そして、ラスは……
何も言えないようで、呆然と立ち尽くしていた。
「ち、ちがうのっ」
仁菜が言うと、シリウスが片手で彼女を抱き寄せる。
「何が違う?」
「や、やめてください」
恥ずかしすぎる。そして、気まずすぎる。
なんで彼がこんなことをするのか、仁菜には全くわからない。
「お前は彼らが来なければ、私に流されていた。違うか?」
耳元に落とされた言葉に、ぎくりとした。
そんなことはないと言いたかったけれど、驚いて抵抗も何もできなかったのは確かだ。
「嫌がってるだろ、離せよ!」
颯がシリウスに向かって来ようとするが、アレクに止められた。