ヤンキー君と異世界に行く。【完】
ラスがそんな気持ちを引きつぐように話す出した。
「おかしいよ。シリウス、力づくでニーナをどうにかするつもりだったって言うの?
お前はそんなやつじゃない。いったいどうしたんだよ……」
凛とした表情を保っていたラスの顔が、だんだんと崩れていく。
それは怒りのせいなのか、悲しみのせいなのか……。
他の者は、黙って二人のやりとりを見守っている。
「ただ……私もそろそろ幸せになりたいと思ったんですよ。
あなたのお世話係として一生を終えるのは、まっぴらなんでね」
途中からシリウスの口調が変わった。
「私はずっと……あなたが赤子の頃から面倒を見てきて、このあたりが限界だと思ったのです。
ずっとずっと、自分のやりたいことをやる時間をすべて犠牲にして、あなたに尽くしてきて、疲れてしまったんです」
「シリウス……」
「私はずっと、無能なあなたの陰で才能を腐らせていくより、自分でこの国を動かしたいと思っていたんですよ」
その瞳はラスをさげすむように見ていた。
「シリウス、何を言っているかわかっているのですか?
それは国家に対する反逆ですよ?」
カミーユが戸惑いを隠さずに言う。
(シリウスさんは、王族に成り代わりたかったってこと?)
それとも単に、もっと国の政治に直接関わる立場になりたかったのか。