ヤンキー君と異世界に行く。【完】
けれどシリウスは、冷ややかな態度で突っぱねる。
「許してくださらなくて、けっこうです。
あなたのような無能な王族にひれ伏すのは、もうこれきりにさせていただく」
「……シリウスさん……!」
さっきまでと別人のようなシリウスに、なにか言ってやろうと思った仁菜。
けれど、そんな彼女を、シリウスは視線で圧した。
私の言う通りにしておけ。そんなふうに言っているようだった。
沈黙を破ったのは、ラスの悲痛な叫び声。
「……勝手にしろ!お前は今現在をもって、参謀の任を解く!
二度と俺の前に現れるなっ!」
ラスは一気に言うと、仁菜の手をひいて扉の外へと歩きだした。
残された旅の仲間たちは、ひとり立ち尽くすシリウスを見つめる。
「どうしちゃったんだよ、シリウス……」
最初は頭に血が上った颯も、驚いて声が出なかった。
シリウスとラスは、他の者たちとは違う、一層強い絆で結ばれているように見えたのに。
いったいどうして、突然こんなことに……。