ヤンキー君と異世界に行く。【完】
「しょうがねえよ。
俺だって全然意味わかんねーんだもん」
颯が言うと、大人二人はきっとそちらをにらむ。
砂漠の民は颯の発言にざわついた。
「仲間でさえも事態を把握していないってどういうことだ?」
「あの王子は我々を砂漠に放り出すつもりじゃないのか?」
そんな声があちらこちらから聞こえてきた。
研究室に不穏な空気が立ち込める中……。
「あー、うっせえ!」
大きな声が響き、周りを静かにさせた。
「とにかく、俺たちの目的は、魔族の森にある風の樹の実をとってきて、この地に緑を蘇らせることだ。
そんで環境を改善すれば、女の子がまた自然に生まれてくるようになるかもしれない。
この星の人間の絶滅を救うために、ラスは奔走してるんだよ。
……だよな?アレク、カミーユ」
突然話し出した颯にびっくりしながら、二人はうなずく。
砂漠の民たちは、だまってその言葉を聞いていた。
「あんたたちは魔族の恐ろしさを身をもって知っただろ?
魔族は魔族で、こっちの世界を支配しようと狙ってる。
これは、一刻を争う事態なんだ。
先に目的を達成して、境界の川の結界を作り直さなきゃ、今後も人間が生き延びられる可能性は、限りなく低くなる。
魔族に滅ぼされるか、自然の成り行きで女の子がどんどん減って、最後の子供が生まれて滅びるのか、どっちかはわからないけど、人間はすぐ生きていけなくなる」
颯の言葉に、息を飲む砂漠の民たち。