ヤンキー君と異世界に行く。【完】
「ラスの行動は単独的なもので、ランドミルの王様も見守ってるだけなんだ。
だけど俺は、ラスが間違っているとは思わない。
待っているだけで、何が改善すると思う?
『女神』を使った研究で、本当に人間は正しい生の営みを続けていけると思うか?」
颯が彼らを見回す。
その瞳には、強い光が宿っているように、アレクたちには見えた。
「不安なのはわかるよ。俺たちも仲間からの情報が不十分なままで、わからないところもある。
それでも、進まなきゃならないんだ。
ここでのんびり魔族が来るのを待つっていうやつはそれでもいい。
だけど、やられた仲間の仇を討ちたいってやつはいないのか?
大事なものを守りたいって勇気のあるやつはいないのか?」
颯の黒い指輪が光る。
そこから現れた銀色の刀身に、長老が声をあげた。
「それは、精霊が手放さず、今まで誰も取り戻せなかった伝説の剣……!」
片手で剣の柄を握り、彼らの前に突き出すと、颯はにっと笑った。
そして、息を大きく吸うと、特別大きな声をはりあげた。