ヤンキー君と異世界に行く。【完】
「俺様は、『煉獄』総長・櫻井颯!
異世界から来た、勇者ってやつだ。
ぐだぐだ言ってねえで、てめえの大事なものを守るために立ち上がれ!
バリバリに気合入れていかねえと、人生なんかすぐにおわっちまうぞ!」
研究室じゅうに響くその声は、空気をびりびりと震わせる。
「守るべきものがあるやつは、俺たちについてこい!」
──ダン!
颯は勢いよく片足を踏み鳴らす。
すると、しばらくぽかーんとしていた砂漠の民たちが、なんとなく納得したような顔になって、「そ、そっか……
じゃあ行くしかないかな」とこぼし始めた。
すると、誰かが大きな拍手をしながら立ち上がる。
「お、俺、行く!ニーナを守る!」
長老の孫(次男)は颯の演説に感動したのか、頬を紅潮させていた。
ちなみに彼は、颯と仁菜の婚約の話は真っ赤なウソだと、もう知っている。
そんな彼を見て、颯は笑った。そして、他の砂漠の民たちも。
「いいけど、あいつはやんねーぞ。
俺様のだからな」
それだけ言うと、あとは頼むとカミーユとアレクに言い残し、奥の部屋に入っていく颯。
アレクはせっかくやる気になった砂漠の民たちの気が変わらないうちに、と彼らの装備を整え始める。
「ハヤテ……大丈夫ですか?
あんなことを言って……」
カミーユはなんとなく颯が気になり、颯の元へ。
すると颯は、怪我をした背中への傷へつながる肩口を押さえて、荒い息をついていた。