ヤンキー君と異世界に行く。【完】
「ムリはいけませんよ、ハヤテ」
けれど、彼はやっぱり、素直で正直なただの少年なのだ。
自分一人ならともかく、大勢の命を背負うなんて、彼にできるわけがない。
本当は、颯自身も不安で怖いことに、変わりはないのだ。
カミーユは颯の肩をさする。
簡単な魔法でも、その痛みは少し楽になるようだった。
「バカでも、ムリしなきゃいけねーときもあるのよ」
颯はにっと笑う。
「ラスはもう俺様のダチだし、ニーナも幼なじみだし。
俺様がぐだぐだ悩んでいる暇はないんだ」
「……でもね、ハヤテ。
ムリはいつまでも続きませんよ?」
そういうと、颯はその顔から笑みを失った。
強い光を放っていた黒い瞳に、寂しさのようなものがよぎる。
「……だな。
さすがの俺様も限界ってもんがあるかもしんねーわ。
最近それ、すげー感じる」
突然泣きそうな顔になってしまった颯に、カミーユは戸惑う。
「我慢できると思ってたんだ。
あいつを守るためなら、俺はなんだってできると思ってた。
だけど、ダメなんだ、最近。
守るどころか、全部ぶっ壊したくなることがある」
「ハヤテ……なにを言って……?」