ヤンキー君と異世界に行く。【完】
・あなたのためなら
魔法で自らの体を小さく作り変えたシリウスは、鏡の前で全身を確認する。
髪を金色に、目をアクアマリンの青に、肌を白磁のような白さに。
彼を知り尽くしたシリウスには、造作もないことだった。
ラスの衣服を身につけると、シリウスはにこりと笑ってみせる。
そう、この笑顔だ。
自分が見続けてきた、ラスの笑顔。
「日が暮れる……」
窓の外を見て出した声はその顔に似合わずあまりにも低く、シリウスは慌てて声帯にも魔法をかける。
ラスになりきり、時間をかせぐこと。
そして、ラスたちを安全にランドミルの外へ出すこと。
それが、自分の役割だと、シリウスは決めていた。
そのために、ラスを……自分の最も大事なものを、粉々に打ち砕いたのだから。