ヤンキー君と異世界に行く。【完】
内心は動揺していた。
そのままラスの部屋に戻ると、間もなくアレクとカミーユがやってきた。
さて、どうする。
今更彼らを裏切ることはできない。
かといって、みすみす危険にさらすこともしたくない。
王妃はいったい、どんな手をうってくると言うのだろう。
策を立てるにしても、時間がなさすぎる。
屈託のない笑顔を向けてくるラスに、あどけない寝顔の仁菜。
彼らを守るためには、いったいどうしたら……。
そうしてできたのは、我ながら驚くくらい、お粗末な計画だった。
「ラス王子、王様と王妃様がお呼びです」
部屋のドアが叩かれ、思考は現在に戻る。
いよいよだ。
「うん、今行くよ」
いつものラスの言葉をマネして、シリウスはマントを翻し、自室を出る。
呼びに来た使いの男は、まったく不審がっていないようだ。
当然だ。自分はいつだって、ラスを見てきたのだから。
シリウスはぐっと顔を上げる。
自分は、彼が外からどう見えているか、全てを把握している。
あとは自分がどれだけいい演技ができるかだ。