ヤンキー君と異世界に行く。【完】
廊下ですれ違う臣下に笑いかけ、庭を通る際に目があった国民に優しく手を振る。
誰も彼の中身がシリウスだとは思わない。
そうして謁見の間にたどり着いたときには、日が暮れていた。
もう、彼らは出発しただろうか……。
シリウスは一歩一歩、ゆっくりと王と王妃の前に出る。
部屋のすみには、兄王子たちもいた。
それに、位の高い騎士たちも。
立ち止まるなり、王が口を開いた。
「ラス王子……シリウスはどうした?一緒じゃないのか?」
「さあ、たぶんその辺にいると思いますけど」
「そうか」
王が小さな声で臣下に「探せ」と指示を出したのが、シリウスにはわかった。
「さて……呼び出されたことに、心当たりがあるか?」
「いいえ、全く」
平気な顔で言い返すと、王妃が立ち上がる。
「お前を国家への反逆罪で、処刑するわ」
「……なんですって?」
その口から出た言葉が信じられなくて、シリウスは一瞬演技を忘れた。
しかし、すぐに顔を作り直す。
「いったい俺が何をしたって言うんです?」
王妃ではなく王に問うと、彼は苦々しい顔で説明をはじめた。
「お前が砂漠の民をこの国に受け入れたのは、彼らを使って国に謀反を起こす気だったのだろう?」
「はぁ?いったいどうしてそういうことになるんです?
俺はただ、集落を焼け出された彼らが気の毒だと思って……」
「黙れ、謀反人!」
怒鳴ったのは、ノアだった。
彼が指示を出すと、騎士たちがシリウスを拘束する。