ヤンキー君と異世界に行く。【完】
「お前が旅に出る前、彼らに送った書状が見つかったんだ!」
ああ、そういうことか。やっぱりな。
シリウスは理解すると、ため息をつきそうになるのを我慢した。
そんな書状は当然ありはしないし、今時そんな古い手で連絡を取る者がいるものか。
あの砂漠の民を相手にするとしても、そんなものを証拠が残るように放置しておくわけがない。
自分がそばについているのに、そんなミスをするわけないじゃないか。
「異世界の人間が現れたのを内緒にしていたのも、王の剣を単独で取り返しに行ったのも、力を手に入れ、自分が
王座につくつもりだったからだろう?」
それはそうだ。
兄王子たちを出し抜いてやるつもりだったのは、真実だ。
だけどそれは王にその功績を認めてもらって、ラスを次の王へと指名してもらうため……決して謀反を起こそうと思っていたわけではない。
「違います」
しかしシリウスは、それ以上の反論をやめた。
口を閉ざした彼の両腕を、天井から吊られた魔法でできた手錠が捉える。
「本当のことを言いなさい」
何を言っても、聞く気などないくせに。
無能な王に、醜悪な王妃よ。
シリウスの口の端から、苦笑が漏れた。
その瞬間、ぐるりとシリウスを囲んだ騎士たちの暴力が、彼を襲った。