ヤンキー君と異世界に行く。【完】
殴ればいい。
傷つきへこむのが、私の頬であるならば。
蹴ればいい。切り裂き、締め上げればいい。
流されるのが、優しいあなたの血でないならば。
痛みなど、どれほどのものだろうか。
拷問の末、とうとう膝をついたシリウスは、のどから上がってきた血を吐き出す。
けれど、決して冤罪を認めることはしなかった。
それは、ラスの名誉を傷つけることになる……。
意識が遠のく。
水を浴びせられ、正気に戻る。
傷つけられる。
それを繰り返しているうち、バンと背後の扉が開く音がした。
「陛下、報告します……!」
「何事だ。控えよ」
「いえ、それが……」
シリウスは、気づく。
口元がゆるんでいくのを感じる。
「カミーユとアレク、そしてシリウス、その一行の姿が見当たりません!」
「なに……?
異世界の人間と、砂漠の民もか?」
「はい、姿を消しました。
カミーユの研究室を捜索しようとしているのですが、どんな兵器や魔法を使っても、びくともしなくて……」
「逃げたか!」
王が立ち上がると、王妃がつかつかとシリウスに近づく。