ヤンキー君と異世界に行く。【完】
「何を笑っているの?
お前が逃がしたのね!」
そのするどいヒールが、シリウスの肩を貫く。
すると短い悲鳴が響き、ラスの姿をしていたシリウスの魔法が解けた。
血に濡れた金髪は青に変わり、長い前髪から水滴がぽたぽたと床に落ちる。
「シリウス……!」
ノアが奥歯を噛む。
「ラスは……本物のラスを探せ!」
騎士たちは傷ついたシリウスをそのままに、部屋の外へ駆けだす。
バタバタという足音を聞きながら、シリウスは肩を押さえてうずくまった。
「あなたがこんなバカだと思わなかった」
王妃の言葉に、シリウスはやっと自分の声で答える。
「今回の旅の計画を立てたのは、私です。
彼らをだまし、いいように使って……自分が功績をあげ、昇進したかった。
ラス様を次期国王にすれば、自然とこの国は私のものになる。
彼の思考や行いはすべて、私が操作していたのだから」
「嘘をおっしゃい」
「嘘ではない。謀反者は私だ。
旅に加担した者たちは皆、私の洗脳を受けている。
ラス王子は、彼らに連れ去らせた。
彼らに王子を隠させ、私が彼に成り代わってやろうと思ったが、しくじったようだ」