ヤンキー君と異世界に行く。【完】
6.本当の気持ち
・王子様のキス
「……それにしても、こんなすげーもんがあるなら、最初から乗せてくれよなー」
颯は固い金属の壁を、トントンとたたく。
仁菜も珍しく、颯に同感だった。
ここは、カミーユが用意した、軍艦の中。
軍艦といってももちろん、海の上を走るのではない。
彼らがいるのは、砂漠の砂の中だった。
アニメで見るような操縦席に興奮したのも最初だけ。
(こんなものがあるのなら、精霊の谷に徒歩で行くことなかったじゃん)
あの汗だくの苦労はなんだったの。
仁菜の微妙な表情を読み取ったのか、カミーユが説明する。
「こんな大きなものが動けば、精霊はすぐに気づいてしまいますから」
結局見つかってしまいましたけどね、と付けたし、彼は操縦席のタッチパネルを操作する。
「さて、ここらへんで今日は休むとしましょう。
明日の朝から、また徒歩の旅ですから」
「ええっ」
「魔族の森の磁場を乱さない、ぎりぎりの距離まで来たんです。
許してもらえませんか?」
思わず不満そうな顔をした仁菜に、カミーユはすまなさそうに言った。
たしかにこの軍艦は、砂漠の民を全員収容しても余裕があるくらい大きい。
だから脱出の際はすごく役に立つと思ったのだけど……現実は厳しかった。