ヤンキー君と異世界に行く。【完】
この軍艦は多少の攻撃はできるけれど、魔族の森を強行突破するのは難しいらしい。
魔族は精霊族と同じく、敵の気配に敏感らしい。
気づかれた瞬間、乗組員全員に危険が及ぶ。
なので、ここからは徒歩で移動しようということになった。
境界の川は、目と鼻の先にある。
ここを越えてしまえば、すぐに魔族の領地。
全面衝突するより、隠れて木の実を手に入れる。
そのほうが、仁菜にとっても危険は少ないのでありがたいといえば、ありがたいのだけど。
「あ、そういえば、俺様としたことが、大事なことを忘れていたんだけど」
颯がぽんと手をならし、アレクを見つめる。
(どうせ、どうでもいいことでしょう……)
仁菜は聞き流す準備を始めた。だけど。
「あいつらが奪ってった、宝石。
あれは取り返さなくていいのか?」
「あ……っ!」
カミーユがイスから立ち上がる。
「神の涙……すっかり忘れていました!」
そういえば、あのカフカとかいう魔族に奪われてしまったのだった。
「しかし、あれを持っていった魔族に派手な動きがないということは、彼らは所持者として宝石に認められなかったんだろうか?」
アレクがむうとうなる。