ヤンキー君と異世界に行く。【完】
炊事場と言っても、携帯食が置いてある食料庫のようなそこに、仁菜はあんぐりと口を開けた。
高校の体育館くらいの広さがあるわりに、キッチンのような場所は、部屋のかたすみにぽつんと追いやられている。
「食事、作らなくていいんですね」
「こっちの方が手軽だし、栄養もあるからな」
アレクは微笑むと、その大きな体で、仁菜には届かないところの食料に手をのばす。
「でも……」
「ん?どうした?」
「砂漠の方たちは、これで満足してくれるでしょうか」
仁菜は、アレクの手にある棒状のクッキーのような携帯食の大袋を見て、不安になった。
彼らは自然を愛しているし、本物の野菜や肉をつかった料理を食べていたはず。
「満足はしないかもしれないが、非常事態だ。やむをえまい」
「そうですね……」
アレクに大袋を渡され、仁菜はそれを荷台に乗せた。