ヤンキー君と異世界に行く。【完】


炊事場と言っても、携帯食が置いてある食料庫のようなそこに、仁菜はあんぐりと口を開けた。


高校の体育館くらいの広さがあるわりに、キッチンのような場所は、部屋のかたすみにぽつんと追いやられている。


「食事、作らなくていいんですね」

「こっちの方が手軽だし、栄養もあるからな」


アレクは微笑むと、その大きな体で、仁菜には届かないところの食料に手をのばす。


「でも……」

「ん?どうした?」

「砂漠の方たちは、これで満足してくれるでしょうか」


仁菜は、アレクの手にある棒状のクッキーのような携帯食の大袋を見て、不安になった。


彼らは自然を愛しているし、本物の野菜や肉をつかった料理を食べていたはず。


「満足はしないかもしれないが、非常事態だ。やむをえまい」

「そうですね……」


アレクに大袋を渡され、仁菜はそれを荷台に乗せた。


< 248 / 429 >

この作品をシェア

pagetop