ヤンキー君と異世界に行く。【完】
「ラス様……」
なんとか声をかけようと思った矢先、操縦室のドアが開く。
「ラス、食事だよ……って、どうしたの?」
「なにかあったのか?」
食料を配り終えてきた仁菜とアレクが戻ってきた。
ラスはそちらに視線をやる。
すると、その手からタブレットが、力なく落下していった。
アレクがそれを拾う。
「これは……?」
隻眼でその内容を認めると、カミーユに説明を求めるように彼を見つめる。
そこにあったのは、シリウスが捕らえられたという記事だった。
彼は第7王子・ラスを洗脳し、自分の手先として利用していた。
砂漠の民を利用して国家へ反逆し、その覇権を自分のものにしようとしていた。
ラスは行方不明であり、シリウスの手先となった砂漠の民やアレク・カミーユ・異世界の人間に誘拐された可能性もある。
だいたいそんなことが書かれており、その下には情報提供を求める言葉と、ラスの画像、そして捕らえられたシリ
ウスの画像が。
アレクが低い声で読み上げたその内容を知り、思わず手元をのぞきこんだ仁菜は、どきりとした。