ヤンキー君と異世界に行く。【完】
「ひどい……!」
悲鳴のような声に、颯が目を開けた。
「どうしたんだ?」
タブレットをのぞき込んだ颯は、眉をひそめる。
画像のシリウスは、全身を痛めつけられ、血を流していた。
青く長かった髪は首の後ろで切り落とされ、頬には見たことも無いあざがある。
いつも周りを見回していたアメジストのような瞳は焦点が定まらないようで、ぼんやりとしていた。
「反逆者の烙印……」
ぼそりと言ったアレクの声が、ほんの少し震えた。
「きっと……シリウスは王妃にはめられたんですね」
カミーユが静かに言う。
「なんとなく、彼がなにかを庇おうとしていることは感じていました。
これは僕の憶測ですが……シリウスは、あの晩王妃に何か脅迫されたんじゃないかと思います。
おそらく、伝説の剣や異世界の少年少女を渡せとでも、言われたのでしょう」
シリウスが、何かを隠している。
それは誰もが感じていたことだった。
「ただ断っただけでは、ラス様やわれわれに危害が及ぶと考えたのかもしれませんね」
「だからと言って……なんという無茶をするんだ……!」
アレクは悔しそうに奥歯を噛む。
どうして、相談してくれなかったんだろう。
そう言っているようだった。