ヤンキー君と異世界に行く。【完】
(シリウスさん、ひとりで全部背負い込もうとして……)
本当は何が起こったのかは、シリウスにしかわからない。
だけど、仲間たちはこの記事が真実ではないと思って疑わなかった。
シリウスが本当にそんなことを画策していたのなら、こんなふうに捕まり、自分たちを逃がすわけがない。
「バカ……」
「ラス?」
「バカだよっ、シリウス!
なんでこんなこと……!」
ラスは床をにらみ、こぶしを握りしめる。
そうして、泣くのをこらえるように。
「ラス……お城に戻ろう?このままじゃ、シリウスさんが……」
仁菜が言いかけるけど、ラスは途中で首を横にふる。
「いまさら戻れないよ」
「ラス……」
ラスは顔を上げる。
仁菜を見つめたアクアマリンの瞳は、泣いてはいなかった。
代わりに、強い決意の色が現れていた。
「だって、今何もせずに戻ったら、みんなや砂漠の民たちが、誘拐犯扱いされて終わりだよ。
そんなの、シリウスだって望まない」
「でも……」
画像で見る限り、シリウスはひどい拷問を受けているようだ。
早く助け出さなければ、一方的な裁判にかけられて、死んでしまうかもしれない。
「俺は、魔族の森に向かう。引き返さないよ」
ラスは一方的に言うと、マントを翻し、部屋の外へ出て行ってしまった。