ヤンキー君と異世界に行く。【完】
「シリウスは俺のために、ああやって自分を犠牲にしたんだね」
「そう……なのかな……」
そうだろうと、仁菜は思う。
なによりラスを大切にしていたシリウスだからこそ、彼を救うために、あそこまでできるんだと。
でも、自分のために大切な人が傷つくのは、悲しい。
だから、はっきりそうだろうと言えない。
(あたしだって、颯が怪我したときはつらかったもん……)
ふと颯のことを考えかけた仁菜に、ラスは笑いかける。
「そうだよ。俺、シリウスに愛されてるからさ」
自信満々に言う彼は、とてもきれい。
いつもの輝きを取り戻したように、仁菜には思えた。
「キツイことを言ったのは、そうしなきゃ俺がシリウスから離れられないからだったんだ」
「うん」
「シリウスは、いつものシリウスだったんだ。
それがわかっただけでも、じゅうぶん。
かなり、こたえたけどね……」
ラスは仁菜に微笑みかける。
その表情は、いつもより大人びて見えた。近くに保護者のようなシリウスがいないからだろうか。
「俺は、シリウスの期待にこたえなきゃ。
成果を上げて、さっさと帰る。で、シリウスを助けるんだ」