ヤンキー君と異世界に行く。【完】
それでも、王妃はそれを黙認し、とにかく見目麗しい女児の誕生を望んだ。
「それでも、結局できたのは見た目だけいい作り物……、完全に男の俺だったってわけ」
王妃は失望し、研究者たちを罵倒した。
しかし王は、それでも王子の誕生と、初めて女神の実験が成功したことを認めた。
王妃は納得いかなかったらしいが、王としては健康な男の子が生まれただけでよしとしようと、彼女をなだめたと言われている。
「そんなわけで俺は、女神の最初で最後の成功例ってわけ。
ただ、それだけの存在なんだ」
「そんな……」
「王妃は案の定、育児放棄したよ」
自分は生まれてはいけなかったんだ。
ラスは赤ちゃんの時点で、そう思っていた。
乳母たちは事務的に自分の世話をするだけで、抱っこしてほしくて泣いてもそのままで、話しかけてもくれない。
女神にいるときは、カミーユの母が、色々話しかけてくれたけど、彼女はもういない。
彼女とその夫が、女神の実験に耐えられなくなって死んでしまったのは、ラスが産まれて数年後のことだった。
ラスはそれを知って、泣いた。
自分のせいだと思った。
ごめんなさい。
女の子になれなくてごめんなさい。
でも、僕がそう望んだわけじゃないんです。
僕だって母上のために女の子になりたかったけれど、どうしてかダメだったんだもの。
お願いです。
誰か僕を、見てください。
僕を、抱っこしてください。