ヤンキー君と異世界に行く。【完】
(そんなに、2人の絆は深かったんだ……)
誰にも望まれずに産まれてしまったラスの苦しみを思うと、思わず泣きそうになる。
だけど、仁菜はこらえた。
(同情して泣くなんて、失礼だよ……)
そう思うのに、涙は重力に負けて、ぽろりと仁菜の抱えたひざに落ちた。
その瞬間、ラスが振り向く。
作り物の美しい顔で、彼女を見つめた。
「ニーナ……ありがとう。俺のために泣いてくれるの……?」
嫌な顔ひとつせず、ラスは指先で仁菜の涙をぬぐう。
仁菜はどんな顔をしていいかわからなかった。
だから、代わりに一生懸命伝えようと思う。
「ラス、自分を作り物だなんて卑下しないで。
どんな風に産まれたって、ラスはラスだよ。
あなたが生きてきて、作り上げてきたラスは、曲がって無くて真っ直ぐで、すごく素敵だよ!」
一気に言い切ると、ラスは驚いたような顔をして……やがて、笑ってうなずいた。
「俺ね、本当は女なんて大嫌いだったんだ。
王妃のこともあるけど、なりたくてなれなかった女性ってものを、俺は逆恨みしていた」
「うん……」
「……だけどね」