ヤンキー君と異世界に行く。【完】
「じゃあ、俺と手をつないでいこう?」
「え……」
「ニーナがイヤじゃなければ」
にこりと笑う笑顔を、少し憎いと思う。
仁菜が嫌がっていないのを、ラスは昨日の彼女の反応からわかっている。
だから、断られないような誘い方をするのだ。
「イヤじゃないけど」
ほら、そう言うしかない。
「じゃあ……ほら、お姫様、お手を」
差し出された手におずおずと自分の手をのばすと、優しくにぎられる。
そのまま歩きだした仁菜は、砂に足を取られて転びそうになるたびに、ラスに支えられた。
半日歩き、食事の時間になって初めて、その手は放される。
砂漠の民たちに声をかけながら歩く、気高い王子の姿を、仁菜は遠くからぼんやりと見つめていた。
(あたし、あんなにキレイな男の子に、告白されたんだ……)
強すぎる日光に焼かれても、ラスの金髪はきらきらと輝いて見える。
「……おい」
突然、後ろからぽかりと頭を叩かれた。
驚いて振り返ると、そこにはぶすっとした顔の颯が。
「颯。あんたはこんなところにいていいの?」
よく見れば、アレクもカミーユも、砂漠の民と話をして、親交を深めようとしているようだ。
「いいんだよ。
それよりニーナ、ちょっと付き合えよ」
「え?なんで?」
「いいから、ちょっとこっち」
どこか不機嫌そうな颯に連れていかれたのは、仁菜用の携帯住居だった。