ヤンキー君と異世界に行く。【完】
「ち、違うの、あれはね、不意うちで……」
「不意打ち?
そんなふうには見えなかったけど」
そうじゃない。
ちょっと待ってと言う暇もなかっただけ。
「それは……ラスの腕前で……あっという間だったというか……」
なんで、浮気のいいわけみたいになってるんだろう?
少し疑問だったけど、仁菜はぼそぼそと誤解を解こうとした。
すると。
「ぼーっとしてんじゃねえよ!
そうやって流されてばっかりだと、いつか痛い目にあうのはお前なんだぞ?
周り見てみろよ。お前を狙ってる男ばっかりだ」
颯はいらだちを隠さず、怒鳴るように言った。
「は……?」
なんであたしが怒られるの?
「アレクもカミーユも、あのクマみたいな長老の孫だって、みんなお前のこと狙ってるんだから……気をつけろよ」
なんでそんなこと、彼氏でもないあんたに言われなきゃならないの。
仁菜もだんだんといらだってくる。
「狙ってるなんて、嫌な言い方やめてよ。
あの人たちは女の子が珍しいから、過剰に優しくするの。それだけだよ」
「じゃあ、ラスは?」
「ラスは……」
ラスだけは、仁菜のことを好きだと、はっきり言葉にした。
まっすぐに見つめてきた目に、偽りはなかったと思う。