ヤンキー君と異世界に行く。【完】


(……颯……)


ラスのときはコントロールできた感情が、自分ではどうにもならないことに気づく。


(嬉しいけど、どうしたらいいのかわからない……)


4年前、中学受験のとき、一足先に中学生になった颯はヤンキーになって、仁菜から離れていってしまった。


そのときに封じこめた想いが、堰を切ったようにあふれ出す。


「バカ……!
あたし、ずっと、そばにいてほしいって思ってたのに……」


本当は、ずっと。


伝えられなかったけど、ずっと颯が好きだった。


だから余計に、裏切られた気がしていた。


こっちに来てから、また話せるようになって、本当は嬉しかった。


だけど、なかなか素直になれなくて。


それに今は、自分を頼っているひともいる。


ラス……彼を、裏切れない……。


「ごめん……っ、颯……あたし、今は……ラスのそばにいてあげたいの……」


ラスは大事な仲間で、いつでも頼って欲しいと、自分から言ったのだ。


だから、今颯の気持ちを受け入れることはできない。


ラスは仁菜が颯のものになってしまったら、きっと傷ついてしまう。


「……ラスが今一番大変なのはわかってる。

でも……同情なら、もうやめとけよ……」


同情。


そうかもしれない。


でも、ラスを今、精神的に追いつめることは、これ以上できない。絶対に。



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