ヤンキー君と異世界に行く。【完】
「わかって、颯……」
「わかんねえよ……!」
バカ。
今は無理なの。
もう少し待ってくれたら、きっと。
そう思っているのに、颯はまた強引に、仁菜の唇を奪いにくる。
「いや、だったら……!」
仁菜は颯の体を力いっぱい押しのけて、泣きながら拒んだ。
「ニーナ……」
颯はさすがに、傷ついた顔をしていた。
(そんな顔しないで……ずるいよ、颯)
胸が痛い。
こんなに痛かったことは、なかったかもしれない。
「だって……さきに手を離したのは、颯じゃない……っ。
帰ったら他人だって、あたしを突き放したのは、颯じゃないっ。
あたしは、中学なんか落ちても良かった。
高校だって、どこでも良かった。
ただ、つらいときに颯に話を聞いてほしかったんだよ……」
なのに、颯はあっさりと、仁菜を置いていった。
「あれは……あのときは……」
颯が何かを言いかけたけど、聞いてはいけないような気がして、とっさに言葉をかぶせた。
「あたしを置き去りにした颯のことなんか、簡単に信用できないよ!」