ヤンキー君と異世界に行く。【完】
……悲鳴みたいだった。
しんと部屋が静まり返ったとき、颯は力なく、仁菜を抱きしめていた腕を離す。
「そっか……悪かったな」
それだけ静かに言うと、すぐに背を向け、部屋から出ていってしまう。
昔より、長く伸びた手足。
自分を守るために傷ついた、広い背中。
颯の全てが遠ざかっていってしまうのを、仁菜は嗚咽をこらえて見つめていた。
声を出したらきっと、想いを抑えられなくなってしまうから。
(颯……)
好きだよ。
大好きだよ。
今、やっと気づいたんだ。
おバカでダサいヤンキーに、子供のころから恋をし続けているなんて、認めたくなかっただけ……。
なのにどうして、こうなっちゃうんだろう?
どうしてこんな最悪のタイミングで、告白なんかしてくるの?
どうして今さら、キスなんかするの?
どうして今さら……。
こんなに、あたしにあなたを好きにさせるの?
「バカバカバカバカバカーっ!!」
颯もバカだけど、あたしもこんなにバカだったんだ。
もう少し颯を傷つけない方法はなかったんだろうか?
そう思い悩む仁菜の泣き声が、外に漏れることはなかった。