ヤンキー君と異世界に行く。【完】
「そしてあちら側の森が、魔族の森だ」
アレクの言う通り、地面の裂け目を境界にして、向こう側には森……というか、広大なジャングルに仁菜には見えた。
それが広がっている。
端がどこか、霧に包まれていてよくわからない。
「おー、トト○が出そうだな!トト○が!」
集合をかけられて先頭集団に合流すると、颯のそんな声が聞こえてきた。
(いるわけないじゃん!
どんだけトト○好きなのっ!?)
出しかけた裏手パンチを無理やり引っ込め、仁菜はこらえる。
(ああ……ツッコミたい……!!)
ぷるぷる震えていると、アレクが心配そうに仁菜をのぞきこんだ。
「あの……ニーナ、説明の途中なんだが」
「はいっ、聞いてますっ!」
ぎくしゃくと地の裂け目の方へ向かって歩く仁菜の手を、アレクが後ろから引く。
「その裂け目の奥深く……そこの方に、川が流れているんだ。
それが、境界の川。
気分が悪くなるといけないから、のぞかない方がいいぞ」
最初から言ってよ。
仁菜は慌てて、アレクのたくましい腕にしがみついた。
(ふええん、高いよ~、怖いよ~!)
震える仁菜の頭を、アレクがよしよしとなでた。