ヤンキー君と異世界に行く。【完】
魔族の森に行くには、この境界の川を越えなければいけない。
(って話だったよね?いったいどうやって……)
そんな仁菜に、カミーユの恐ろしい声が聞こえてきた。
「あっち側まで綱を渡して、それにぶら下がっていくしかないですね……」
一瞬、綱渡りの綱にコアラが両手足でぷらんとぶら下がっている映像が、仁菜の頭の中をよぎる。
(いやいやいや、ムリだから!)
あっち側まで、どう見たって300mはある。
「アレクさん、あれって落ちたらどうなるんでしょうか……?」
「境界の川に落ちる前に、崖に体をぶつけて大けがをするだろうな」
「下手したら……」
「命がない」
「い……いやあああああ~!」
顔面蒼白で涙目になった仁菜に、ラスが何事かと駆け寄ってきた。
「どうしたの?」
「あ、あの、もっと文明の利器を使うべきだと思うの。
綱渡りなんか怖くてムリだよう……」
「綱の上を歩けとは言ってないよ?
魔族に気づかれないようにするには、それしかないんだ。
それとも、この崖をいったん降りて、流れの強い川を泳いで渡って、あっちの崖を上るのと、どっちがいい?」
どっちも嫌!
命綱つけてても死にそうじゃん!