ヤンキー君と異世界に行く。【完】


「大丈夫だよ。俺がついてるから。

命綱をしっかり結んでおけば……」


仁菜を安心させるように笑顔で言うラスが、悪魔に見えた。


助けを求めるようにカミーユを探すと、一瞬だけど颯と目が合ってしまう。


彼はとても不機嫌な顔をすると、ぷいっと顔をそらしてしまった。


(な、なによ!あんたに助けなんか求めてないんだから!)


ラスもいるし、力持ちのアレクもいる。
なんとかなる。


ぶるぶる震える足をなんとかしようと深呼吸をしていると、背後で声がした。


「あれはなんだ……?」


砂漠の民の声だった。


一行は、それぞれ彼が指さした砂漠の方を見つめる。


遠く、地平線の上に、黒い点が見える。


かと思ったら、それはだんだんと数を増やしていった。


「……魔族だ……!」


ラスが叫ぶと、一同にざわめきが起きる。


(そんな……!あと少しなのに……!)


黒い点はあっと言う間に近づいてきて、それが獣の形だということが、誰の目からも明らかになる。


「全員、弾を込めろ!
大丈夫だ、教えたとおりにやればできる!」


アレクが力強く叫ぶと、砂漠の民たちは、軍艦の中で支給されたバズーカやライフルに似たものを、それぞれ構えだした。



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