ヤンキー君と異世界に行く。【完】
そうして後退しながら戦闘準備をすすめる一同だったが、獣はあっという間に目の前に現れる。
それはすべて灰色の体毛をしており、尖った耳と灰色の目をしていた。
狼とイノシシの間のようなそれは、獰猛な息をまき散らしながら、こちらをにらむ。
ぐるぐると喉を鳴らして獲物を狙う音が、一同の中心に保護された仁菜の耳にまで聞こえてきた。
「大型魔獣が50体近くか……」
アレクが大斧を構える。
「全員、自分の身を守ることを最優先に考えてね」
ラスが言うと、颯が続く。
「大丈夫だ!なんとかなる!」
その瞬間、にらみあっていた空気が飛散した。
魔獣が、牙をむいておそいかかってきたのだ。
戦闘が始まった。
カミーユは弓を構え、魔獣の目を狙って打つ。
砂漠の民たちもそのまねをして、銃弾を放った。
しかし、魔獣はそのずんぐりむっくりな体からは想像もつかないほど、動きが早い。
攻撃を避けたと思ったら味方を前足で蹴飛ばして、一同をあっという間にちりぢりにさせてしまった。
「大丈夫か!」
大斧を振り下ろし、アレクが魔獣の頭部を切り落とす。
その下から、踏まれていた砂漠の民を助け出した。
彼は大丈夫だと言い、座ったままライフルをかまえ、魔獣に向けた。