ヤンキー君と異世界に行く。【完】
「くそ……っ、邪魔、するなよっ!」
ラスはレイピアを片手に、魔獣の背中に飛び乗る。
暴れるそれの上から、すれ違った魔獣の脳天を突き、目を傷つける。
(ラス……!)
ラスの動きは今までよりももっと早くなっていて、仁菜は目で追うのがやっとだった。
彼が乗っていた魔獣の頭部を刺し、絶命させると、その前を別の魔獣が走り抜けていった。
その前方にいたのは……
「颯……!」
思わず叫ぶ。
颯は先に貫いていた魔獣の体から剣を抜き、構えなおす。
そして、突進してきた魔獣の開いた口の中へ、その剣を真っ直ぐに突き出した。
ぐああと、恐ろしい声を上げて魔獣はもがく。
颯は剣を抜き、それを背中に突き刺した。
「総長の肩書は、伊達じゃないみたいですね」
カミーユが、動けなくなった怪我人を背負い、仁菜の元へやってきた。
仁菜に与えられた役目は、こうして動けない者と自分を、精霊の盾で守ることだった。
「あたしも、戦いたい……」
無力な自分が悔しくて唇を噛むと、カミーユは優しく言った。
「ニーナが戦いに出たら、誰が彼らを守ってやれるんですか?
これは、きみにしかできない役目です。
よろしく頼みましたよ」