ヤンキー君と異世界に行く。【完】
「みんな……!」
砂漠の民たちも、仲間たちも、疲れているのが目に見えてきた。
力尽き、血を流して倒れるものが続出する。
仁菜はいてもたってもいられず、盾の中から出た。
本当に怖くて、足が震える。
いつ魔獣が、自分に牙をむいてくるかわからない。
(だけど、このままじゃダメだもん!)
仁菜は勇気をふりしぼり、魔獣に見つからないようにこっそりと怪我人に近寄る。
そして重い彼らを引きずって、盾のドームの中に入れた。
すぐに汗だくになって、二の腕がぷるぷると震えた。
だけど仁菜は、何度も盾と怪我人の間を往復し、重たい体をひきずる。
(これが、あたしのできることだもん……!)
悔しくて涙が出そうだけど、仁菜は歯を食いしばり、その地味な作業を続けた。
視線の先では、アレクがカフカに斧ごと振り払われ、砂漠に背中を打ち付る。
「ああ……っ!」
アレクにとどめを刺そうと、カフカが砂を蹴り、空中に舞う。
するとアレクの前に、ラスが両手を開いて立ちはだかった。
「ラス……!」
ラスが斬られてしまう。
そう思った瞬間、仁菜は叫んでいた。
「ダメェェェェェェっ!!」