ヤンキー君と異世界に行く。【完】
するとラスの目の前に銀色の盾が現れ、カフカの剣を受け止めた。
カフカが驚いて飛びのくと、すぐにその盾は消えてしまう。
「はぁ、はぁっ……」
仁菜は荒い息をつきながら後ずさる。
怪我人がいるドームを維持しながらさらに新たな盾を出現させた反動か、体から一気に力が抜けていくのを感じた。
カフカがゆっくりと、こちらに顔を向ける。
「またお前か……」
口の端は上がっているけど、目は笑っていない。
恐怖が、仁菜の体を硬直させていく。
「邪魔だな!」
カフカが仁菜に視線をむけると、その間にラスがレイピアを持って立ちはだかった。
「大将は俺だ!ニーナには手を出すなっ!」
透き通る声は空に響く。
日に透ける金髪が、仁菜の目の前でさらさらと風に吹かれてきらめいた。
「なんだ?お姫様を守るナイトが変わったのか?」
カフカは剣を構えたまま、魔獣を斬り倒していた颯を横目でちらりと見た。
その瞬間、仁菜の胸がちくりと痛む。
「まあ、どっちでもいいか。
お前は俺の腕を傷つけたし……どうせ人間は順番に、皆殺しだし?」
ぺろりと唇をなめたかと思うと、カフカはラスに突っ込んでいった。