ヤンキー君と異世界に行く。【完】


ラスはレイピアをかまえる。


しかし二人の武器が交わる前に、カフカの背中を狙う者がいた。


「お前の相手は俺だっ!」


そう言ったのは颯だった。

彼は、ざん、と今までになかった速さで剣をなぎ払う。


「颯!」


仁菜が叫んだとき、カフカの長い黒髪が風に舞っていった。


本人は攻撃をよけ、砂の上に着地している。


「ちっ!」


舌打ちした颯は、すぐに剣を構えなおす。


カフカは切り落とされた長髪が無残にはらはらと落ちていくのを、呆然として見ていた。


「ラス!ニーナと一緒に安全なところに逃げろ!早く!」


颯が叫ぶ。


「お前一人じゃ無理だよ!」


ラスはそう返す。


「無理だろうけど、お前が今ここで倒れるわけにはいかねーだろ!

そんなことになったら、シリウスだって浮かばれねえ!」


「ばっ……シリウスはまだ死んでないから!縁起悪いこと言うな!」


「あ、そっか。

とにかく、早く逃げろ!」


無謀だとわかっていても、颯は一人でカフカに向かっていく。


カフカはそれに気づき、鬼のような顔をした。


「おっまえぇぇぇ……俺の自慢の髪を切りやがったなぁぁ!?

これを伸ばすのに、何百年かかったとおもってやがんだ?ああん!?」



< 289 / 429 >

この作品をシェア

pagetop