ヤンキー君と異世界に行く。【完】
ラスはレイピアをかまえる。
しかし二人の武器が交わる前に、カフカの背中を狙う者がいた。
「お前の相手は俺だっ!」
そう言ったのは颯だった。
彼は、ざん、と今までになかった速さで剣をなぎ払う。
「颯!」
仁菜が叫んだとき、カフカの長い黒髪が風に舞っていった。
本人は攻撃をよけ、砂の上に着地している。
「ちっ!」
舌打ちした颯は、すぐに剣を構えなおす。
カフカは切り落とされた長髪が無残にはらはらと落ちていくのを、呆然として見ていた。
「ラス!ニーナと一緒に安全なところに逃げろ!早く!」
颯が叫ぶ。
「お前一人じゃ無理だよ!」
ラスはそう返す。
「無理だろうけど、お前が今ここで倒れるわけにはいかねーだろ!
そんなことになったら、シリウスだって浮かばれねえ!」
「ばっ……シリウスはまだ死んでないから!縁起悪いこと言うな!」
「あ、そっか。
とにかく、早く逃げろ!」
無謀だとわかっていても、颯は一人でカフカに向かっていく。
カフカはそれに気づき、鬼のような顔をした。
「おっまえぇぇぇ……俺の自慢の髪を切りやがったなぁぁ!?
これを伸ばすのに、何百年かかったとおもってやがんだ?ああん!?」