ヤンキー君と異世界に行く。【完】
怒鳴り声と共に、すさまじい殺気がカフカから放出される。
それだけで倒れそうになった仁菜の手を、ラスが引っ張る。
「早く、ドームの中へ!
盾の維持にだけ集中して!」
「だ、だけど……!」
「颯の気持ちが、わからないの!?」
ラスの一言が、ナイフのように胸に突き刺さる。
(まさか颯、ラスだけじゃなくて、あたしを守ろうとして……?)
そう思って見た時には、カフカが颯に斬りかかっていた。
片手だけで扱っているとは思えないほど、彼の剣は早く、重い。
颯はなんとかそれを伝説の剣で受けて、はじく。
「颯……きゃあっ!」
颯の方を見ていた仁菜に、横から魔獣が飛び込んでくる。
するとラスがその魔獣を切り捨てた。
「早く逃げて!」
でも、でも。
自分だけ、安全な場所で見ているだけなんて。
みんなが……
颯が、命がけで戦っているのに。
仁菜の足は動かなかった。
ラスは魔獣に囲まれ、仁菜の手を引く暇がなくなってしまう。
ちらりと見ると、他の仲間も、魔獣の方に手がかかっているようだ。
その間にも、カフカと颯の武器は、ひっきりなしに打ち付けあい、からみあう。