ヤンキー君と異世界に行く。【完】
「切り刻んでやる!」
叫んだカフカの剣を避け、颯は砂の上を転がる。
そして敵の足元を狙って刃を繰り出すが、飛んで避けられる。
慌てて立ち上がると、颯の足が砂にとられ、よろけた。
そのほんの一瞬をつき、カフカが剣を颯の脳天に向かって振り下ろす。
──ギイン!
「く……っ!」
カフカの剣をうまく受けられなかった颯の手から、伝説の剣が砂に落ちた。
「はははっ!もうあきらめたらどうだ!」
高らかに笑うカフカの前で、颯は腕を押さえてうめいた。
「颯……!」
気づけば、体が駆け出していた。
仁菜は颯のすぐ近くまで、戻ってしまったのだ。
「バカっ、早く逃げろ!」
「だ、だって……お願い、もうやめて。
もう勝負はついたはずでしょう?」
仁菜は懇願するように、カフカを見上げる。
しかしその灰色の目は無慈悲に、二人を見下ろしていた。
「勝負……?そんなもの、やるまえから勝敗はわかってただろ?
大事なのは、ちゃんと敵の息の根を止めること。
あの世に行っても覚えておけよ、人間」
カフカが剣を構える。
仁菜は盾をもう一つ、自分の前に発動させようとした。
たとえ力の使い過ぎで倒れてしまっても、今颯を守れなきゃ意味がない。