ヤンキー君と異世界に行く。【完】
ぎゅう、とラスに体を抱きしめられる感覚がした。
仁菜は必死でしがみつくけれど、それでもふわりと、足が宙に浮く。
カフカの攻撃は、二人を飲み込み、吹き飛ばした。
抗えない力の濁流に飲まれ、押し流される。
──ずざざざっ!
意識を失いかけたとき、砂の音と体を地上に打ち付けられた痛みで、目を覚ます。
体のあちこちがカミソリで切れたように痛い。
でも、早く起きなければ。
そして仁菜が体を起こし、まぶたを開けたときに見たのは……。
「………ラス!!」
「ぅ、く……っ!!」
さっきまでみんなと見ていた、地の裂け目。
そのふちに片手でぶら下がっている、ラスの姿だった。
「ラス!!」
仁菜は慌てて両手を伸ばし、ラスの腕を支える。
「ラス様!ニーナ!」
アレクとカミーユが魔獣から逃れ、こちらに向かおうとする。
しかしその歩みも、カフカの振り回した剣圧で妨げられてしまう。
「邪魔すんじゃねえ!」
カフカは怒鳴り、仲間の方へ同じ一撃を放つと、こちらにゆっくりと歩み寄ってくる。
「うっ、くう……っ!」
仁菜は渾身の力でラスを引き上げようとするが、自分と同じくらいの体重のラスの体は、いっこうに動いてくれない。