ヤンキー君と異世界に行く。【完】
「ニーナ、危ないから離して!
早く逃げて!」
ラスは地のふちで、そう叫ぶ。
「そんなの、ムリ……!」
この手を離したら、ラスは死んでしまう。
そうなったら、絶対に後悔する。
仁菜はそう確信して、ラスの手をにぎりしめた。
「死なせないんだから……!
ラス、がんばって……!」
そうは言うけれど、体が言うことをきいてくれない。
力のない仁菜の腕は、ラスの体重に耐え切れず、すぐに震えだした。
「ニーナ……っ。
もういいよ、お願いだから、逃げて!」
よくなんかない。
首を横にふってラスの腕にしがみつく仁菜は、決して力をゆるめようとはしなかった。
それでも少しずつ、自分が谷底へと引っ張られていく感覚がつきまとう。
そんなところに、さらに恐怖をあおる声が響いた。
「よくがんばったな、小娘と王子」
カフカが、笑いながら近づいてくる。
「仲良く谷底へ落ちろ」
冷たくそう言い放つと、背中に背負うようにしていた剣を、正面へとかまえなおす。
もうだめかもしれない……。
手がしびれてきた。
でも、あきらめたくない。
仁菜が思った、その時だった。
「そうはさせぬ!」