ヤンキー君と異世界に行く。【完】
──ダン、ダン、ダン!!
突然重い銃声がしたかと思うと、目の前に砂煙が舞い上がる。
「く……っ!」
カフカの苦しそうな声が、煙の向こうで聞こえた。
すると、仁菜の背後に、誰かがよりそう。
何が起こったのか確かめる間もなく、腕にかかっていたラスの体重が、ふっと軽くなるのを感じた。
「あ……っ!」
背後に寄り添った影は、仁菜の体ごと、ラスを引き上げようとする。
「そのまま、手を離すな!」
その声には、聞き覚えがあった。
仁菜の予想を裏付けるように、見上げるラスの目に、涙がたまっていく。
突然力がわきあがってきたような気がして、仁菜も自分の体に精一杯の力をこめる。
やがてラスの顔が地上にまで見えてくると、背後の影は一気に彼を引き上げた。
仁菜はやっと手を離し、ふりかえる。
そこにいたのは、青い長髪を切り落とされ、頬に反逆者の烙印を押された、シリウスだった。
「遅くなりました、わが君」
傷だらけではあるが、相変わらずの月光に冴える刃のような美貌で、シリウスはラスに微笑む。
「……シリウス……っ!」
ラスは彼の名を呼び、その首にだきついた。
その体を、シリウスが強く抱きしめる。